2009年5月27日水曜日

照明の明るさや色が、心理にどのように関わってくるか教えてください

みんなに「環境心理学で何を学びたい」と問うと、一番多いのがこの手の質問で
す。これから始めてみましょう。
 
明るさの指標の一つに照度があります。掌を上に向けて見た時、それがどれだけ
明るく見えるかと対応する指標だと思ってください。その値が大きくなるほど、
照明環境は好まれます。人は明るい場所が好きなのです。虫は街灯に引き寄せら
れますが、人も向こうに明るいところがあると行ってみたくなります。これも、
明るい場所が好きだということを表していそうです。
オフィスや商業施設は明るいことが多いですが、これは覚醒(arousal)が高ま
ることと関係しているでしょう。一方、音楽を聴きつつワインを楽しむシチュ
エーションであれば、照明は暗くなりそうですね。リラックスした状態は、低照
度でもたらされることが多いと言えると思います。
面白いのは、高照度には青白い光が、低照度にはオレンジ色の光が似合うという
実験結果があることです。蝋燭の仄かな光から、蛍光灯の均一な明るさまでをイ
メージしてみると、確かにだんだん青白くなるのが自然な感じがします。
そう言えば、朝日の時刻から昼、昼から夕方の屋外の光の状態を思い浮かべる
と、色と明るさが上述のように変化しています。人の好みは、長い間生活してき
た自然界の光の状態の影響を受けているのかもしれませんね。...遺伝子に組
み込まれている!?
 
K. Maki

2 件のコメント:

  1. 参考文献
    ○槙 究ら:「3.2.5 ポジショニング分析」(日本建築学会編(2000):よりよい環境創造のための環境心理調査手法入門,技法堂出版所収)
     居間をさまざまな光の状態にし、印象がどう変化するかを調べた。
    ○A. A. Kruithof(1941):Tubular Luminescence Lamps for General Illumination, Philips Technical Review 6(2), 65-73.
    ○中村 肇・唐沢宜典(1997):照度・色温度と雰囲気の好ましさの関係,照明学会誌,81(8A),69-76.
     色温度という光の色の指標と照度という明るさの指標で構成された平面上で、どの辺りが好まれるかという問題を扱っている。

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  2. ちくりんさんの研究仲間?のNaoyukiOiです。
    発展学習?と参りましょう。

    > 人は明るい場所が好きなのです

    空間内の明るさがどこも似たようなものだと,これで終わりですね。では,人は「自分がいる場所が明るい」のが好きなのでしょうか,それとも「自分から見える場所が明るい」のが好きなのでしょうか。

    「自分から見える場所が明るい」のが好まれないケースは少なそうです。自分のいるところは暗めで,周囲が明るくよく見える場合を好むのは,人間は安全な場所から周囲を見渡せる場所を好む,というアプルトン(Appleton)の隠れ場-眺望理論(Prospect - Refuge Theory)に合致します。

    一方,暗めの照明でワインを楽しむシチュエーションからは,「明るさ」の好みは,周囲をどのくらいはっきりと見る必要があると感じているかで大きく変わるということがわかりますね。

    参考文献
    ○Jay Appleton (1996): The Experience of Landscape, John Wiley & Sons
    ○大井尚行:光環境の質に関する考察-室内照明環境の輝度ヒストグラムによる表現-,日本建築学会研究報告九州支部第40号・2, pp.25-28

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