2009年6月14日日曜日

集中できる部屋の色は?

これはAFTの会場で受けた質問です。学生からの質問にも同様のものがありまし
た。みなさん、集中したいのにできないことが多いのでしょうか。確かに、私も
しょっちゅうありますが。
 
さて、まず最初に紹介したいのは、学校環境について調査している人のつぶやき
です。建築学会で計画系のセッションを聞きに行った時のことでした。「教室環
境をいろいろ変えても、結局先生と生徒のやる気なんだよね。環境の影響をなか
なか影響抽出できなくて、困るんですよ。」と、そういうニュアンスの発言だっ
たと思います。教室環境を様々変えても影響が抽出できないくらいだから、一般
的には色は小さな影響しか与えていないと思われます。(無茶苦茶などぎつい色
にすれば別ですよ。)
 
それでも色を変えたら、効果が上がることはあるかもしれません。自室の色を自
分で変えたのなら、それは「やらなきゃ。」と思った証拠ですから、その思いを
大事にする(思い起こす)のに色の効果がある、そういうことは考えられると思
います。
 
せっかく変えるのであれば、自分の好みの環境にしたらいいでしょう。色だけで
なく、素材や物もいじって好みの環境にしてしまうのです。それは人によって違
うと思いますが、好みの環境の方が、やる気が出るということはあると思いま
す。ただし、浮気の元は禁物。好きな音楽、好きなテレビ、好きなゲームを取り
そろえた環境で集中できないのは明らかです。
 
私は、昔は音楽を聴きましたが、今はまったく聴きません。それは、音が邪魔す
るようになったからです。そのきっかけは文章を書くこと。論文や本を書く時、
相当に集中しないと書けません。私にとって負荷の大きい作業なのです。高校生
の頃、ラジオを聴きながらでも勉強できていたのは、実は勉強していたのではな
くて、教科書の英文をノートに転記したり、わからない単語の意味を調べて書き
込んだり、そういう「ながら勉強」に向いたことをやっていたに過ぎません。本
当に集中しないといけないのなら、そういう気分になるまで待たないといけない
し、そういう時には周辺環境の刺激が強すぎるのはマイナスでしょう。
よく、家族の声やテレビの音がない深夜になってからレポートを書くという学生
がいますが、そういうことです。
 
というように、壁の色は一般的な範囲であればそれほど問題なく、それ以外の様
々な要因の方が、強い影響を持つだろうと思います。
今度、集中するためにどんなことをしているか、学生にアンケートでもしてみま
しょうか。

3 件のコメント:

  1. 参考文献
    ○ホーソン実験、ホーソン効果
     ネットで調べてみてください。やる気が効くことがわかると思います。
    ○カクテルパーティー効果
     ネットで調べてみてください。ヴォーカルが入った音楽より、インスツルメンタルの方が邪魔しないのはなぜかがわかるでしょう。
    ○佐藤仁人:執務空間における視環境要因の人間心理に与える影響評価、日本建築学会計画系論文集 405, 29-38 ,1989
    無窓居室より、高照度、植栽あり、絵画ありの場合に、作業成績が有意に上昇したとしている。また、そういった要素を取り込むことにより、窓があることによる集中力の阻害を防止できるとしている。まとめとして、印象や気分の評価がよいパターンでは作業成績がよいことがわかったとしている。
    ○佐藤仁人:室内の窓や植栽・絵画が脳波などに及ぼす影響: 執務空間における視環境の生理心理的影響に関する研究、日本建築学会計画系論文集 日本建築学会計画系論文集 (461), 87-95 ,19940730
    窓・植栽・絵画がα帯域、β帯域のパワー相対値に影響を与えることから、リラックスと適度な刺激を与えている可能性を指摘している。

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  2. 照度であれ音環境(BGM)であれ、自分で調節できる・自分で選んだ設定という意識がやる気に寄与する、ということはいろいろありそうです。

    ちなみに、私は英語文献を読む際は英語のBGMが適しています。個々の聞き取りは能力的に及ばないから邪魔にならず、無意識的に英語モードにするには適しているみたいです。

    参考文献:
    ○上猶優美, 佐久間哲哉: 室内音環境が知的生産性に与える影響 -対人意識が伴う場面を想定した被験者実験-, 日本音響学会研究発表会講演論文集(秋季), pp.1027-1028, 2008.

    ○上猶優美, 佐久間哲哉: 室内音環境が知的生産性に与える影響 -拡散的・収束的思考と音環境の関係性について-, 日本音響学会研究発表会講演論文集(春季), pp.1037-1038, 2009.

    上記二件は東大の佐久間先生のHPからDL可能。
    http://www.env-acoust.k.u-tokyo.ac.jp/public3-j.html

    ○西川雅弥他、タスク照明の個人制御が知的生産性に与える影響に関する研究、日本建築学会環境系論文集(603)
    P.101 2006年5月

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  3. TAIS(Test of Attentional and INterpersonal Style)の宣伝文句。
    「集中力とは、一点に集中することではなく、必要なときに必要な方向に注意を振り向ける能力のことだ。」
    スポーツ心理学の権威が開発したからと聞けば、うなずける文句ですが、日常でもそういうことはありそうです。
    「集中」の状態を考えてみる必要はありそうですね。

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