「ロイヤル・コペンハーゲンに紺が使われ、和食器にも紺のいいものがある。な
ぜ、寒色なのにいいんでしょうか。」
食べ物は暖色系が多い。4色運動というのをご存じだろうか。「赤」「黄」
「緑」「白」の4色の食べ物を取れば、タンパク質、脂質、野菜、糖質などがバ
ランス良く摂取できるというものである。そう、寒色系の色は登場しない。敢え
て挙げるなら「なす」くらいだ。それなら、食べ物の色が暖色でない場合に食欲
がわかないのは、見慣れないせいかもしれない。
では器やインテリアは?
「中華のどんぶりが赤いのは食欲を増すため」、「部屋が赤いのも食欲を増すた
め」。いや、たぶん、中国では赤は慶事を象徴する色だから用いられているのだ
ろう。「マクドナルドの看板は赤い」。それは食べ物の色を象徴しているかも知
れないが、町中で目立つように誘目色を用いたという部分もあるかも知れない。
「普通の部屋はベージュでしょ」。そう、それが普通。
このように考えてくると、必ずしも暖色だから食欲を増すとは言い切れないよう
な、他の原理でも説明できるような気分になってくる。
そこで件の質問である。
私の考えとして、まず、食べ物をおいしく見せる背景として、白と暗い色の2種
類があるのではないかということを話した。フランス料理の皿は白いことが多い
が、それは食べ物を引き立たせる。また、楽焼きの黒や備前の茶なども、食べ物
を引き立てることができると思う。二色配色の評価をしてもらうと明暗の差が大
きな2色で構成された配色の評価が高いことが多いが、食べ物と明暗の差が大き
くなる、暗い色はいい味が出ると思う。
それで、ロイヤル・コペンハーゲンは白がベースであり、和食器の方は紺という
暗い色がベースなので、少し事情は異なると思うということをしゃべった。
これは、暖色が背景となるのがいいという考え方とは別の考え方である。
考えてみれば、刺身にバランを添えたり、竹やガラスの器にそうめんを盛った
り、青い切子のグラスに日本酒を注いだり。別に暖色系でなくても食欲を増すこ
とがある。活きが良く見えることや、涼しげな風情が食欲を増したと考えるのが
妥当だろう。バターのパッケージを黄色以外にすると売れなかったというのも、
赤もダメなのだから暖色かどうかの話ではない。イメージの話だろう。
...というように、暖色だから食欲が湧くとか寒色だから湧かないとか、そう
いうことではないような気がする。