2009年6月21日日曜日

ロイヤル・コペンハーゲンのブルー、和食器のブルー。 なぜいいの?

AFTの会場での「暖色が食欲を高める、は本当か?」という話から発展した質問。
「ロイヤル・コペンハーゲンに紺が使われ、和食器にも紺のいいものがある。な
ぜ、寒色なのにいいんでしょうか。」
 
食べ物は暖色系が多い。4色運動というのをご存じだろうか。「赤」「黄」
「緑」「白」の4色の食べ物を取れば、タンパク質、脂質、野菜、糖質などがバ
ランス良く摂取できるというものである。そう、寒色系の色は登場しない。敢え
て挙げるなら「なす」くらいだ。それなら、食べ物の色が暖色でない場合に食欲
がわかないのは、見慣れないせいかもしれない。
 
では器やインテリアは?
「中華のどんぶりが赤いのは食欲を増すため」、「部屋が赤いのも食欲を増すた
め」。いや、たぶん、中国では赤は慶事を象徴する色だから用いられているのだ
ろう。「マクドナルドの看板は赤い」。それは食べ物の色を象徴しているかも知
れないが、町中で目立つように誘目色を用いたという部分もあるかも知れない。
「普通の部屋はベージュでしょ」。そう、それが普通。
このように考えてくると、必ずしも暖色だから食欲を増すとは言い切れないよう
な、他の原理でも説明できるような気分になってくる。

そこで件の質問である。
私の考えとして、まず、食べ物をおいしく見せる背景として、白と暗い色の2種
類があるのではないかということを話した。フランス料理の皿は白いことが多い
が、それは食べ物を引き立たせる。また、楽焼きの黒や備前の茶なども、食べ物
を引き立てることができると思う。二色配色の評価をしてもらうと明暗の差が大
きな2色で構成された配色の評価が高いことが多いが、食べ物と明暗の差が大き
くなる、暗い色はいい味が出ると思う。
それで、ロイヤル・コペンハーゲンは白がベースであり、和食器の方は紺という
暗い色がベースなので、少し事情は異なると思うということをしゃべった。
これは、暖色が背景となるのがいいという考え方とは別の考え方である。
考えてみれば、刺身にバランを添えたり、竹やガラスの器にそうめんを盛った
り、青い切子のグラスに日本酒を注いだり。別に暖色系でなくても食欲を増すこ
とがある。活きが良く見えることや、涼しげな風情が食欲を増したと考えるのが
妥当だろう。バターのパッケージを黄色以外にすると売れなかったというのも、
赤もダメなのだから暖色かどうかの話ではない。イメージの話だろう。
...というように、暖色だから食欲が湧くとか寒色だから湧かないとか、そう
いうことではないような気がする。
 

2 件のコメント:

  1. 参考文献
    ○色彩演出事典 / 北畠耀編、セキスイインテリア(学習研究社)、1990.5
     ピンクの目玉焼きや、食べ物の色相分布が掲載されている。

    ○ 森伸雄・納谷嘉信・辻本明江、池山潤平・難波精 一郎:二色調和の調和域について (色調和の研究 その 5)、電気試験所彙報、第 30 巻、第 11 号、1966
    ○納谷嘉信他(1969):配色感情の個人差に関する研究(その1 実験計画と実施),電気試験所彙報,33(2),205-229.
     抽象的な二色配色の評価を扱っている。明度差が評価と大きく関わっているとの結果。

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  2. 「盛り付け七法」のことが頭に浮かびました。
    懐石料理家の故辻嘉一によると、盛り付けでは、一皿の盛り付けを考える際にシテとワキを決める。シテが動物性食品ならワキは植物性、四角いものには丸いもの、高さのあるものには横に広がるものというように対比の技法を使ってお互いの特徴を引き立たせるという考えかたです。
    味覚は同じものを味わい続けると慣化によって感覚が鈍くなる現象があり、このような対比はいつまでも刺激を新鮮に保つ働きがある。
    景観の研究では、人間はある風景を見ると、全体を均等に眺めているのではなく、背景的な「地」と、そこから浮かびあがる「図」とに区別して認識することが報告されている。大量の情報を流す場合に、主役的な情報を区別して見せる方が情報伝達者の意図や目的を理解されやすい。

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